特集
耳鼻咽喉科診療所の未来を拓く
日本経済は,低成長時代に入ったと言われる。少子・高齢社会の行く末には,人口減という大試練も待ち構える。企業の多くは,増収はおろか現収維持すら困難な情勢から収益力強化に余念がない。医療機関とて,淘汰の危機に直面するなか,経営改革を迫られている。しかし,企業的発想で収益性のみを追求することはできない。診療内容や患者対応などで何らかの特色を打ち出し,医療の質を高め患者の期待に応えていく地道な努力が不可欠である。
今回の座談会「耳鼻咽喉科診療所の未来を拓く」には,診療所院長3氏にお集まりいただいた。3氏は,互いの学会報告や論文に関心を抱いたことを機に知り合い,電子メールを通じて学術的交流を重ねる「メル友」の仲。日常診療・経営に関しては,これまで深く語り合うことがなかったという。そこで,診療所の特色ともなっている各氏のおもな取り組みや考え方を紹介していただき,それに基づいて議論をたまわった。


上出洋介氏・浦野正美氏・寺本典代氏 座談会(発言順)
かみで耳鼻咽喉科クリニック院長
上出 洋介
(写真中央)
1980年東京慈恵会医科大学卒業。95年にかみで耳鼻咽喉科クリニックを開業。
浦野耳鼻咽喉科医院院長
浦野 正美
(写真左)
1982年新潟大学医学部卒業。2002年に浦野耳鼻咽喉科医院を開業。
寺本耳鼻咽喉科医院院長
寺本 典代
(写真右)
1981年神戸大学医学部卒業。98年に寺本耳鼻咽喉科医院を開業。


IT機器を活用した画像記録は患者説明,臨床研究に役立つ


上出 本日は,浦野耳鼻咽喉科医院(新潟市),寺本耳鼻咽喉科医院(兵庫県氷上郡),そして私のクリニック(静岡県富士市)の取り組みを議論のたたき台として,これから診療所として生き残っていくための方法と課題を探っていきたいと思います。
浦野 上出先生は,画像データベースに基づく治療支援システムを構築してこられたそうですね。まず,その経緯からご説明くださいますか。
上出 はい。私は開業前から,耳鼻科領域の疾患は患者さんにとって「近くて遠い」と感じてきました。耳や鼻は目の近くにありますが,患者さん自身が中の様子を見ることができない。ですから,医師が病変部を診て説明するだけでは,患者さんに病態を理解してもらうことが難しい。特に患者さんが子どもの場合,保護者の心配は想像以上に大きいですから,説明が十分でないと黙って別の医療機関に変わられることもあるかと思います。私も親の立場であれば,そうします。
 そこで開業に当たって真っ先に,どういう形で患者説明を充実させることができるかを考えました。折しも内視鏡が普及し始め,小型のCCDカメラも開発されたため,それらを組み合わせて局所所見を患者さんに示すことにしました。その結果,画像所見の提示は患者さんに非常に大きなインパクトを与え,どのような口頭説明にも勝る理解が得られるようになりました。まさに「百聞は一見にしかず」を実感した次第です。
寺本 初めは,現在のような画像データベースの構築までは考えておられなかったということですか。
上出 そうです。患者説明での有用性にのみ魅力を感じていました。ところが,局所所見の画像を手作業で記録しているうちにIT(情報技術)が急速に進化し,画像を自動的に保存・整理できる機器が現れました。そこで,そうしたIT機器を順次導入し,患者さんに受診時だけでなく過去の所見を見せることで,治療経過の説明も容易になりました。医師にとっては,情報を患者さんに開示することで自分の技量が問われることになりますが,多くの所見を画像で見るうちに観察眼はどんどん鍛えられます。結果的には,診断・治療がより的確にタイムロスなく行えるようになりました。
浦野 IT機器による診療の効率化というメリットは,患者さんへの処置に時間を要する耳鼻咽喉科において非常に大きいですね。私も,開業と同時に画像ファイリングと電子カルテを組み合わせたシステムを導入したおかげで,診療効率化の恩恵を受けています。
寺本 画像を用いた説明力を一度実感すると,IT機器は手放せなくなりますね。静止画もそうですが,動画はもっと説得力があります。医師の実力アップにもつながると思います。ただ,こういうシステムは高額ですから,これから購入される先生方は,私のように安価な家電のパソコンと付録の画像ソフトで工夫されるのも1つの方法です。
上出 さらに動画では,ポリープや発声時の細かい声帯の動きなどを説明するときの説得力は静止画とは比べものになりませんが,投資の額は上がります。
寺本 上出先生のすごいところは,新患全員の局所所見を記録されている点ですね。病変のみならず,正常の所見もすべて保存されている。ここが,素晴らしい。累積10万件を超すデータ数は恐らく世界一でしょう? 学会発表にも活かされていますね。
上出 数だけはいっぱいあると言えるかもしれませんが,正常なものを見続けることによって今まで全然気がつかなかったことを発見することもありますから,とにかくひたすら撮り続けています。
浦野 臨床データの蓄積,数は力になります。従来,開業医のところにフレッシュな患者さんがたくさん来るのに,その所見を保存する手段がなく,学会などで発表できませんでした。しかし,最近では個人レベルでIT機器を取り入れることによって,大学病院や民間の大病院になし得ないような臨床研究ができる道が開けました。開業医が研究にも夢を持てるようになったことは,素晴らしい進歩だと思います。



TOPIC1
 「パソコン」「インターネット」「IT(情報技術)」。これらは,単なる世相語ではない。現にわれわれの仕事や暮らしの様相を変えるほど,大きな影響をもたらしつつある。医療界では,ITの活用が進むにつれ,診療形態だけでなく診療内容そのものも変化していくだろう。
 当院では,私が「電脳耳鼻科まっしぐら!」と音頭を取り,数年前から種々のIT機器を導入し,画像データベース(DB)を基礎とする治療支援システムの構築に力を入れてきた。画像に着眼したのは,その描出力がいかなる医師のスケッチ力にも勝り,より正確な診断・治療,一目瞭然の患者説明に役立つと考えたからである。また,画像をデジタル情報に変換してDBを作ることにより,データの保存・整理・検索・伝送を効率化し,利便性の向上を目指した。
 まず1995年,診療時に患者の内視鏡鼓膜画像をCCDカメラで取得し,診療後それをコンピュータで患者別に整理・保存する作業を始めた。その結果,特に中耳炎の診断力が大幅に向上した。患者に病変部を画像で示すと,病態や治療内容・経過に理解が得られやすく,治療意欲を高める効用ももたらされた。
 しかし,画像保存数は1日平均30枚に上り,3年後には2万枚を超えた。このため手作業による保存法を見直し,98年に静止画像取り込み装置(Cap Box)および画像DB(d-View)を導入。その後,動画・静止画総合ファイリングシステム(EZCap Personal Plus),高速フィルムデジタイザー(CP-X150),デジタルX線装置(FCR)を順次追加した(A)。Cap Boxとd-Viewの導入で,診療と並行して必要な画像を記録し,患者別・時系列の自動保存が難なく可能になった。CP-X150は他施設で行われたCT・MRIの画像のデジタル情報化,FCRはフィルムレス化を実現してくれた。
 さらに画像システムは,連携施設の医師との情報交換,院内での職員教育,自身の臨床研究や学会発表用資料の作成などにも威力を発揮する。耳鼻咽喉科の将来は,画像システムなくしては考えられなくなった。
A. かみで耳鼻咽喉科クリニックにおける画像システムの構成A. かみで耳鼻咽喉科クリニックにおける画像システムの構成

かみで耳鼻咽喉科クリニックのホームページ http://www.kamide-clinic.com/




各施設の長所を相互に活かす病診連携は時代の趨勢である

上出 浦野先生は,病診連携を積極的に図られ,診療内容と患者対応の充実に努めておられるそうですね。
浦野 今日の厳しい医療状況では,一般の開業医が高度な医療機器や設備,優秀なスタッフをそろえるのは困難ですから,入院を要する治療や手術は病院にお任せするしかありません。そうなると,診療の幅がどうしても狭くなり,勤務医時代に培った専門の技術や経験が錆びついてしまう。患者さんの病院志向に拍車がかかりかねない。病院の診療効率,医療経済にも悪影響を及ぼします。このため近年,病診連携や診診連携の重要性がクローズアップされてきたのだと思います。基幹病院の中には,開放型病床を設けて「オープンシステム」を採用するところも増えてきました。
 要するに今は,診療に必要な設備やスタッフのすべてを自前で持つという時代ではなくなりました。各施設の長所をうまく利用して施設間でネットワークを組み,患者さんに最良の診療を最適な形で提供することが求められています。ですから当院は,開業当初から病診・診診連携を積極的に進めてきました。
上出 具体的には,各施設の機能をどのように使い分けているのですか。
浦野 外来でできる耳や鼻の機能改善手術は自院で対応(図1)していますが,短期入院を要する手術は月1回程度の割合でオープンシステムの病院で行っています。私がかかりつけ医,執刀医,また術後は主治医として一貫して診療に携わるため,患者さんから「安心して治療が受けられる」と好評を得ています。高度医療が必要な悪性腫瘍などの患者さんには,連携先の専門病院を紹介しています。また,CTやMRIの検査は,徒歩3分ほどの場所にある脳神経外科クリニックにお願いし,データはすべてディスク(CD-R)に焼き付けてもらい,当院の画像データベースに入力しています。

図1. 浦野耳鼻咽喉科医院における手術の様子
図1. 浦野耳鼻咽喉科医院における手術の様子

上出 最近は病院を取り巻く環境も大きく変わり,むしろ病院のほうが連携に積極的ですね。病診連携の広がりは,時代の趨勢と言えますね。
寺本 特殊で専門性の高い分野は,ますます細分化されてくるでしょうから,紹介システムをうまく操るのが,これからの時代の「名医」だと思う。自分ですべてをこなす時勢ではないと思います。ただし,浦野先生のように,最後は自分のところで診るという姿勢,紹介後も主治医として責任を持ち続けることは大事ですね。
上出 開業医が手術にも対応することには,費用対効果の点でジレンマのようなものも伴うかと思います。
浦野 確かに収入面を考えますと,手術に時間を割くよりも,外来で一般の患者さんをより多く診たほうがいいでしょう。ただ,うちの事情で言いますと,新潟市は人口51万人に対して耳鼻科開業医が31軒,大きな病院も5軒くらいありますから,皆さんと同じようなことをやっていては自院の存在が埋没してしまいます。私の場合,手術に自分のアイデンティティを見出し,診療に独自性を出すという意味も大きいと思います。もちろん,適応をきちんと選んだうえでのことです。
寺本 先生の場合,勤務医20年のキャリアで手術するということが,かなめでしょう? 腕がいい開業医の手術は,今後は増えると思います。患者さんは,口コミで「熟練した技術」を聞きつけて集まってくる。開業医と大学病院がうまく棲み分ける,そういう時代かもしれません。

TOPIC2
 勤務医を続けるか,開業医へと転進するか―。病院での勤務が長くなればなるほど,組織への不満が募る半面,自院開業には二の足を踏みやすい。開業に伴い,次のような診療上の制約が予想されるからである。(1)入院を要する手術ができない。(2)CT・MRIなどの高度画像処理が使えない。(3)他科の医師と緊密な連携を図るのが難しい。(4)救急に対応できないなど。
 しかし最近,開業には追い風も吹き始めている。病診連携,さらには地域の基幹病院による「オープンシステム」の採用が徐々にではあるが進んできているからである。各施設の相互協力によって,開業医は勤務医時代に培った診療スタイルを変えずに,良質かつ高度な医療を効率的に行うことができる。
 当院は2002年4月に開業後,済生会新潟第二病院のオープンシステムに登録したほか,他の病医院とも積極的に連携を図ってきた(B)。同時に連携施設と患者情報を円滑に共有すべく,電子カルテや画像ファイリングシステムなどのIT機器を導入した(C)。最新のIT機器が近年,機能性と操作性の向上と相まって廉価で確保できるようになったことも,開業医療活性化の推進力になっている。
 病医院との連携,IT機器の活用により,当院は患者の病態と希望に応じた医療を提供することができている。一般的な検査や耳・鼻の機能改善手術(鼓膜穿孔閉鎖術,鼻アレルギーに対するレーザー手術など)は院内で対応。高度な検査や手術,入院を要するときは病院を紹介受診していただいている。その場合,当院での問診・検査結果が活かされるため,診療の継続性と利便性が保たれる。
 オープンシステムでは,手術が必要な場合に私自身が病院に赴いて執刀することもできる。救急医療には,副主治医を務めるなどしてかかわれる。開業医になってからもメスを捨てることなく,高いレベルで専門医療を追求しうる。病院側も設備・人員を効率的に運用し,収益性を高めることができる。耳鼻咽喉科診療所の将来に希望を持たせてくれるシステムと言える。
B. 浦野耳鼻咽喉科医院のおもな連携医療機関
B. 浦野耳鼻咽喉科医院のおもな連携医療機関
C. 電子カルテの表示例
C. 電子カルテの表示例

浦野耳鼻咽喉科医院のホームページ http://www.urano-ent.com/


ワンパターン診療から脱して個々の患者への対応力を磨く


上出 寺本先生は,ワンパターンにならない診療の実践に努めておられるとお聞きしました。
寺本 まず「毎日通いなさい」という診療は,成り立たなくなると思います。1日に何百人も診て,ほとんど患者さんと話もせずに耳に風を通すか,鼻にスプレーをするか,喉に薬を塗るかの3種類の治療しかやらないで「毎日通いなさい」と指示するようなワンパターンの診療は,これからは成り立たないことを認識することが大事ではないかと思います。
 この背景の1つに,非常に重症な感染症が減ってきたことが挙げられると思います。エビデンスというか,もっと意味のあることをしなければいけない。また,他科と差別化する。例えば内科でアレルギー性鼻炎を治療し,小児科が中耳炎を扱うようになれば,耳鼻科医しかできない手技が重要になると思います。商品に例えれば,非常に安くても売れ残る商品は必ずあるし,かなり高めの値段なのに絶対に売り切れる商品もあります。医療も二極化すると思う。患者さんが,非常に高額を支払っても納得して受ける検査・手技がある一方,この程度ならいくら安くても受けない,無益だ,というものもあるでしょう。二極を1人1人に照準を合わせて患者さんが求める医療に医者が焦点を絞り込んでいく時代だと思います。すべての人にワンパターンな対応では済まされなくなると思います。
上出 個々の患者さんへの対応の1つとして,先生はホームページで医療相談を受け付けていらっしゃいますね。トラブルや訴訟沙汰を考えますと,非常に勇気がいることだと思いますが。
寺本 ホームページ(図2)を見ていただくとわかるかと思いますが,子どもの中耳炎の治療について私がどう考えているかしか書いていません。ホームページの目的は,読者から質問を受け取ることと,メールで回答することです。医療相談を続ける理由は,まず私がやりたいということと,営利につながらないことでも進んでやらないと,営利を追求することばかりしていては自分の医療が枯れてしぼむと感じるからです。


図2. 寺本耳鼻咽喉科医院のホームページ
図2. 寺本耳鼻咽喉科医院のホームページ


浦野 医療相談で学ばれたことなどはありますか。
寺本 私は大学の関連病院に20年ぐらいいましたから,何かをなすのが医療だと思っていました。「何かしなければならない。なんとか治さなければならない」。開業してもそのスタンスから抜け出ていなかったのですが,ホームページで医療相談を始めてから「聞いてくれるだけでいいから,聞いてほしい」「何もしなくてもいい,その場にいてほしいだけ」,そういう医者が要るということがわかりました。だから,送信ボタンは要る。医者から患者へ,一方通行の発信ではいけない。患者から医者へのこころの送信ボタンは要る。今さらながら,そういうことを学びました。
浦野 患者さんにとって,医療の話を聞く窓口が存在する意味の大きさに気づかれたわけですね。
寺本 さっきの医療訴訟の話ですが,ホームページだけではなく,何であれ,医療訴訟は付き物で怖いと思います。怖いからやらないのではなく,常に怖さと闘いながら前を向いてやっていこうと思います。ただ,回答を返信する前に,自分の書いた文章に愛があるかどうかは,チェックします。真情があれば,半端な答えでもいいのです。そこに愛があると確認してから送信ボタンを押します。いまだ訴訟に至らないのは,幸運なだけ。

TOPIC3
 5年前に氷上郡に唯一の耳鼻科を開業した。神戸市からJR往復5時間を通勤している。開業当初はかなり苦しかった。来る日も来る日も患者数がゼロで,さすがに気が滅入った。毎日山ばかり眺めて過ごした。今振り返ると,倒産(?)の危機に直面して「OPを捨てたら,自分に何が残るのか。自分は何を武器として闘っていけるか」を真剣に考えたことで,医療の新しい切り口,自分の新たな能力を見つけることができたと思う。
 氷上郡は山峡の土地で,人口密度が低く,開業に高収益を求めることは無理だと悟った。「ここに耳鼻科ができたおかげで助かりました。ありがとう」。患者の感謝の言葉だけを医療の目標に絞った。人生ではっきり金儲けと決別した瞬間から気楽に診療できるようになり,人生観が変化したと感じる。日々よほど人生に求める志を明確にしないと,人間の弱さから私は儲けたい願望についつい引きずられてしまう。そうすると,自分が納得できる臨床には到達できない。
 はやっている時期は5〜7年,長くて10年。それ以後は下り坂をだらだら下る―。死ぬまで同じ場所で,同じ利益を上げ続けることは無理ではないか。開業医が衰退を辿るのは自然の理。そういう危機感と覚悟は胸中に秘めておくべきだと思う。自分だけが例外ではない。建物,器械だけでなく,医者本人も消耗品であり賞味期限がある。
 ならば,どうしたら,できるだけ長く生き延びられるだろうか。1つは,勉強して自分を磨くこと。臨床で切磋琢磨を疎んではならない。もう1つは,私個人に輝きがなければ,患者をひっぱっていけないと思う。
 自分の診療スタイルを固定せず,常に流動的に時代を先読みすることで人間の鮮度を維持しようと考え,5年単位でガラリと臨床も生き方も変えている。開業医は,次の5年の跳躍に備えて懐に3手ぐらいは常備すべきで,利益につながらない副業的な3手をも,深淵に,温めておくべきではないか。私は,絶えず新しい分野に挑戦し続けて,激変する医療環境を乗り切ろうと考えている。
 私は患者1人1人の視線に合わせて「患者が求める医師寺本像」を演技している。「医者を演じる視点」「患者を演じる視点」「両者のやりとりを演出するディレクターとしての視点」の3つが,3Dで立体感を持つとき,つまり演出家としての私が,寺本と患者とのやり取りを冷静に見下ろす構図をなすときに医療が完成すると思う。
1人1人の目線に照準を合わせる集中力が,開業医のパフォーマンスの鍵であろう。
D. チューブ留置術の説明アニメーションビデオ
D. チューブ留置術の説明アニメーションビデオ D. チューブ留置術の説明アニメーションビデオ
D. チューブ留置術の説明アニメーションビデオ D. チューブ留置術の説明アニメーションビデオ
患者説明の充実に向けて寺本耳鼻咽喉科医院が独自に企画。説明は10分間でまとめられている。
寺本耳鼻咽喉科医院のホームページ http://homepage2.nifty.com/teramotozibiinkouka/


医師がモチベーションを高め続けるなかで未来は拓かれる


浦野 私も開業後,寺本先生がおっしゃったように,患者さんのニーズは診療以外にもいろいろあることを痛感してきました。ですから診療環境の整備に努め,バリアフリーにしたり,庭にハーブを植えたり,ネブライザー療法にハーブを取り入れてみるなど,病院にいたころとはずいぶんと考え方が変わりました。
上出 確かに診療所には,患者さんにとって「駆け込み寺」のような対応と空間づくりも求められますね。いろんな患者さんが来られますから,ときに医師の受容・傾聴といった対応が治療に勝る手当てになることもあります。加えて,精神的にリラックスできる空間があれば,患者さんはもっと安心される。うちは最近,新築するに当たって待合室を思い切ってカフェのような造りにし,建具や家具は手作りの木製にしました(図3)。子どもたちの遊び道具は,職人に積み木を作ってもらいました。それに内装に薫製の木を多用したため,病医院特有の消毒臭がなくなりました。


図3. かみで耳鼻咽喉科クリニックの待合室
図3. かみで耳鼻咽喉科クリニックの待合室

寺本 お二人ともハイテクを誇る診療所でありながらアメニティにも配慮され,ハイテクとローテクのバランスが絶妙ですね。
 私は今後,健診と往診に力を入れていこうと思っています。どちらも院外に出て行う医療。氷上郡内には耳鼻科開業医がいなかったから,今まで3歳児健診も保育園健診も学校健診もなされていなかったので,まず健診のデータを集めることから始めています。18歳ぐらいまで人は郡内をほとんど動きませんので,データに疫学的な価値があると思います。また,無料で補聴器のフィッティングを往診したり,保健婦や学校の養護教員に耳鼻科疾患について講義したり,地域の啓蒙活動に力を入れています。医者がその地で長く稼ぎ続けるためには,目先の利益につながらなくても無償で種をまく行為が大切だと思う。
浦野 私は今,オープンシステムや電子カルテを利用していますが,これからもいろんな形態や道具を取り入れ,診療をある程度楽しみながらやっていきたい。それが,ワンパターン診療に陥らずに長続きするコツではないかと考えています。
上出 医療はマン・ツー・マンが基本ですから,どんなにシステムが高度になろうと,どんなにコンピュータ化されようと,最後は医師が患者さんと同じ目線で胸を張ってものが言えるか,患者さんがそれに応えてくれるかということに尽きます。診療所の未来は,やはり医師がいつもモチベーションをしっかりと持って高めていくことで拓けてくるものだと思います。
 先生方,本日はどうもありがとうございました。


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