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| 日本経済は,低成長時代に入ったと言われる。少子・高齢社会の行く末には,人口減という大試練も待ち構える。企業の多くは,増収はおろか現収維持すら困難な情勢から収益力強化に余念がない。医療機関とて,淘汰の危機に直面するなか,経営改革を迫られている。しかし,企業的発想で収益性のみを追求することはできない。診療内容や患者対応などで何らかの特色を打ち出し,医療の質を高め患者の期待に応えていく地道な努力が不可欠である。 今回の座談会「耳鼻咽喉科診療所の未来を拓く」には,診療所院長3氏にお集まりいただいた。3氏は,互いの学会報告や論文に関心を抱いたことを機に知り合い,電子メールを通じて学術的交流を重ねる「メル友」の仲。日常診療・経営に関しては,これまで深く語り合うことがなかったという。そこで,診療所の特色ともなっている各氏のおもな取り組みや考え方を紹介していただき,それに基づいて議論をたまわった。
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上出 浦野先生は,病診連携を積極的に図られ,診療内容と患者対応の充実に努めておられるそうですね。 浦野 今日の厳しい医療状況では,一般の開業医が高度な医療機器や設備,優秀なスタッフをそろえるのは困難ですから,入院を要する治療や手術は病院にお任せするしかありません。そうなると,診療の幅がどうしても狭くなり,勤務医時代に培った専門の技術や経験が錆びついてしまう。患者さんの病院志向に拍車がかかりかねない。病院の診療効率,医療経済にも悪影響を及ぼします。このため近年,病診連携や診診連携の重要性がクローズアップされてきたのだと思います。基幹病院の中には,開放型病床を設けて「オープンシステム」を採用するところも増えてきました。 要するに今は,診療に必要な設備やスタッフのすべてを自前で持つという時代ではなくなりました。各施設の長所をうまく利用して施設間でネットワークを組み,患者さんに最良の診療を最適な形で提供することが求められています。ですから当院は,開業当初から病診・診診連携を積極的に進めてきました。 上出 具体的には,各施設の機能をどのように使い分けているのですか。 浦野 外来でできる耳や鼻の機能改善手術は自院で対応(図1)していますが,短期入院を要する手術は月1回程度の割合でオープンシステムの病院で行っています。私がかかりつけ医,執刀医,また術後は主治医として一貫して診療に携わるため,患者さんから「安心して治療が受けられる」と好評を得ています。高度医療が必要な悪性腫瘍などの患者さんには,連携先の専門病院を紹介しています。また,CTやMRIの検査は,徒歩3分ほどの場所にある脳神経外科クリニックにお願いし,データはすべてディスク(CD-R)に焼き付けてもらい,当院の画像データベースに入力しています。
上出 最近は病院を取り巻く環境も大きく変わり,むしろ病院のほうが連携に積極的ですね。病診連携の広がりは,時代の趨勢と言えますね。 寺本 特殊で専門性の高い分野は,ますます細分化されてくるでしょうから,紹介システムをうまく操るのが,これからの時代の「名医」だと思う。自分ですべてをこなす時勢ではないと思います。ただし,浦野先生のように,最後は自分のところで診るという姿勢,紹介後も主治医として責任を持ち続けることは大事ですね。 上出 開業医が手術にも対応することには,費用対効果の点でジレンマのようなものも伴うかと思います。 浦野 確かに収入面を考えますと,手術に時間を割くよりも,外来で一般の患者さんをより多く診たほうがいいでしょう。ただ,うちの事情で言いますと,新潟市は人口51万人に対して耳鼻科開業医が31軒,大きな病院も5軒くらいありますから,皆さんと同じようなことをやっていては自院の存在が埋没してしまいます。私の場合,手術に自分のアイデンティティを見出し,診療に独自性を出すという意味も大きいと思います。もちろん,適応をきちんと選んだうえでのことです。 寺本 先生の場合,勤務医20年のキャリアで手術するということが,かなめでしょう? 腕がいい開業医の手術は,今後は増えると思います。患者さんは,口コミで「熟練した技術」を聞きつけて集まってくる。開業医と大学病院がうまく棲み分ける,そういう時代かもしれません。
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浦野 医療相談で学ばれたことなどはありますか。
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寺本 お二人ともハイテクを誇る診療所でありながらアメニティにも配慮され,ハイテクとローテクのバランスが絶妙ですね。 私は今後,健診と往診に力を入れていこうと思っています。どちらも院外に出て行う医療。氷上郡内には耳鼻科開業医がいなかったから,今まで3歳児健診も保育園健診も学校健診もなされていなかったので,まず健診のデータを集めることから始めています。18歳ぐらいまで人は郡内をほとんど動きませんので,データに疫学的な価値があると思います。また,無料で補聴器のフィッティングを往診したり,保健婦や学校の養護教員に耳鼻科疾患について講義したり,地域の啓蒙活動に力を入れています。医者がその地で長く稼ぎ続けるためには,目先の利益につながらなくても無償で種をまく行為が大切だと思う。 浦野 私は今,オープンシステムや電子カルテを利用していますが,これからもいろんな形態や道具を取り入れ,診療をある程度楽しみながらやっていきたい。それが,ワンパターン診療に陥らずに長続きするコツではないかと考えています。 上出 医療はマン・ツー・マンが基本ですから,どんなにシステムが高度になろうと,どんなにコンピュータ化されようと,最後は医師が患者さんと同じ目線で胸を張ってものが言えるか,患者さんがそれに応えてくれるかということに尽きます。診療所の未来は,やはり医師がいつもモチベーションをしっかりと持って高めていくことで拓けてくるものだと思います。 先生方,本日はどうもありがとうございました。 |
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